八ヶ岳南麓や軽井沢でよく見られる、戦後に植林されたカラマツ林は、”やわらかな新緑”、”夕陽に映える黄葉”、”整然と林立する並木”など、叙情的・女性的な印象を持っていた。北原白秋の「落葉松」の詩や、野上彰作詞の女性合唱曲「落葉松」にもそんなイメージがある。
一方、奥日光湯ノ湖周辺のあちこちで見かけた天然木のカラマツは、エネルギッシュで逞しさに溢れていた。宿泊した宿の露天風呂の塀際に生えていたカラマツも、樹齢約400年、周囲5.41mで、樹勢いまだ衰えずという感じでその迫力に圧倒された。
もし、北原白秋や野上彰が滞在先の軽井沢から奥日光まで足を伸ばし、湯ノ湖周辺のカラマツを目にしていたら、”からまつはさびしかりけり”とか、”落葉松の夜の雨にわたしの心が濡れる”などの詩は生まれなかったのかもしれないと勝手な想像をした。