2016/02/26

房総紀行 2/3 天の石笛(いわぶえ)

房総の浜辺を散策していると荒波に打ち上げられた色々な物が目につく。今日の収穫物は流木、錆びた "鮑おこし" 、そして中でも特に興味をひかれた穴開き石ころ。

海岸で出会った漁師に尋ねると地元では穴貝と呼ばれている貝の仕業らしい。(ちなみにこの御仁、投網漁の名人で先日も黒鯛40kgを投網で水揚げしたそうだ。教えてくれた穴貝にまつわる情報も実に具体的で正確だった。)

確かに穴のなかにまだ貝殻が埋まったままのものもある。三浦海岸などでもよく見られる石ころだということは後で知ったが、初めて見る自分にとってはものめずらしく、目に入り次第拾ってポケットに入れて持ち帰った。

ネットで調べると穴開けの犯人は穿孔貝と呼ばれる二枚貝。穿孔貝と称される貝は他にも数種類あるようだが、今回見かけたのはカモメガイと呼ばれる種のようだ。

穿孔貝は英語ではボーリングシェル(Boring shell)。貝の先端部分を動かし、"貝の付け根のヤスリ状の部分を開閉して岩を削る" とか、"貝殻付け根がドリル状に回転して穴を掘る" と解説されている。

一方、特殊な体液を出して砂岩を溶かして穴を開けるという説もある。 もしかしてボーリングと溶解の両方の技を使うのかも知れない。ともあれ、そのように自分の成長に合わせて穴の深さや大きさを徐々に深く広くし、結局は終生その岩穴の中で生活するようだ。

穿孔貝が穴を掘る岩礁は潮の干満で露出と水没を繰り返す潮間帯。このことから、陸上の断層に見られる穿孔貝の穴跡から、過去に起きた地殻隆起や巨大地震の発生間隔などが推測できるそうだ。(神奈川県立生命の星・地球博物館 科学研究報告書)

"縄文時代に神事で使用された石笛は穿孔貝が穴を開けた石"と記述されたWEBもある。江戸時代の国文学者(で神学者)平田篤胤の房総半島行脚に同行しその顛末を記録した二人の弟子の著、「天石笛之記」に出てくる霊石笛 "天の石笛" もボーリングシェルの仕わざにも思える。

. . . と、穴開き石への興味と疑問はドンドン広がる。

房総紀行 1/33/3