2009/02/23

ハチはなぜ大量死したのか

1月31日に出版されたばかりの本。

ミツバチが突然姿を消す蜂群崩壊症候群(=CCD)がメインテーマだが、内容はそれだけに止まらない。

生産量だけを追求する農業の歪み、複数の要因が絡まって崩れる自然界の生態系バランス、穀物に残留する浸透性農薬に冒される食の安全など、現代社会の環境問題を幅広くカバーしている。

また、これまでミチバチと縁の無かった人も、この本(特に第二章“集団としての知性”)を読めば、ミツバチの不思議、高度な組織的行動などに興味を抱かずにはいられないはずだ。難解なミツバチ研究の内容が、ジャーナリストの手によって平易な文章で読物風にまとめられている。

それにしても原書の書名 "Fruitless Fall" を、文藝春秋は「ハチはなぜ大量死したのか」などと矮小化した訳書名に変えたのだろうか?
原書 どおり「実りなき秋」の方がはるかにこの本の内容にふさわしいと思う。著者自身も、レーチェル・カーソン氏の「沈黙の春(Silent Spring)」を意識して付けた書名であることは間違いだろうに。