先日、神田神保町へ出かけた折に立ち寄った農文協直営の農業書センターで見つけた「蜂蜜一覧」の復刻版、日本ミツバチに興味を持つ人なら一度は目にしている絵柄のはずだ。江戸時代に完成した日本独特のサステイナブル養蜂術。分蜂群の捕獲から巣箱での飼育方法、垂れ蜜・絞り蜜や黄蝋・白蝋の作り方など、浮世絵風な筆致の図と、実務的な説明文で構成された絵図鑑だ。
図面中央に描かれている蕎麦屋の岡持ち(おかもち)のような木箱が重箱式巣箱。週末養蜂家の間には今でも支持者が少なくない。巣板上部に蜜を貯めるミツバチの生態を利用し、最上段巣箱だけを切り離して採蜜する。蜂群への負担をできるだけ軽くしながら、蜂蜜の一部を少しばかり失敬する。「みつばちの大地」で見た米国アーモンド畑でのミツバチ達への扱いとはかなり異なり、そこには"自然への遠慮"の気持ちがある。
それにしても農業書センターの「みつばち・養蜂」コーナーの充実振りは立派。自分の知る限りでは、ミツバチ関連の書籍の品揃えでは間違いなく都内書店中でダントツのトップだと思う。隣のビルの岩波ホールで「みつばちの大地」が上映中であることも影響してだろうが、平積みと三段の書棚にこれだけのミツバチ関連の本が陳列された光景を見て嬉しくなった。
備考:「蜂蜜一覧」略史
正式書名は「教草第廿四 蜂蜜一覧」。1873(明治6)年のオーストリア・ウィーン万国博覧会に出品するために編纂された全30葉から成る教草シリーズの二十四番目に刊行された絵図資料。当時の日本の日常生活における衣食の原料や製造方法を全国から収集し、伝統的な技術等について子供たちに教えることを目的に作成された。なお、「教草(おしえぐさ)」は江戸時代から使われていた言葉で、初等教育用の教材を意味する。(東大農場博物館WEBサイトからの引用)