「実験養蜂新書」(明治40年発行、吉田弘蔵著、杉本翰香堂刊)
. . . ブログ知人、[O島@山梨]さんが教えてくれた本。
明治の末、日光の山奥でこれほど科学的な目でニホンミツバチを見つめていた養蜂家がいたことに驚く。その上、その語り口が軽妙で実に楽しく読める。特に、分封についての記述は、不思議でエキサイティングな分封時の様子が生き生きと伝わってくる。
次の「著者あとがき」を読めば、ニホンミツバチ愛好家は一読せざるをえなくなるはずだ。ただ同時に、同書巻頭には上写真のような墨書も掲げているのは意味深ではあるが . . . 。
“本書は養蜂上に於ける余の實驗を基とし蜜蜂飼育法の大要を叙述したものであるから、養蜂家は本書の指導する所に遵由して之を實際に試みなば、其の趣味と實益とを了知せらるるに至るのみならず、萬に一つも失敗を招くことは無いと信ずる。...(以下略)”
(原書「實驗養蜂新書」国立国会図書館近代デジタルライブラリーから抜粋)
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分蜂前夜:
. . . 夕方にその巣箱に耳をあて、静かに巣内の動静に注意してみよう。. . . 盛んに別れの宴を催すようである。時に、清らかで上品な音楽が聞こえることがある。. . . その音はあたかも天使の吹笛のようである。およそ1分ごとに「ヒュー、ウー」と、か細いが高く響く非常に奥ゆかしい特別の羽根音がする。演奏は夜を徹して行われ止まることがない。. . .
分蜂当日:
. . . 蜂群は先を争って巣門を出て空中に飛び出し、輪形を描きながら狂乱したかのように舞い飛ぶ。. . . 女王蜂がゆっくりと巣門を出てくると、宮城を譲り受けることになっている新女王蜂の部隊が、まるで雪崩のような勢いでこけたり転んだりしながら一時にどっと出ててくる。遠征軍を盛んに見送るかのようである。. . . ようやく城の中は静かになり、分封式のすべてが終わるのである。. . .
(azumasy現代訳「実験養蜂新書」からの抜粋)