2011/01/10

熱殺戦法の隠し技

天敵スズメバチに攻撃されたニホンミツバチは、数十匹で一斉に飛びかかり、ピンポン球のような塊を作ってスズメバチを取り囲む。

そして、飛翔筋を盛んに動かして蜂球内温度をスズメバチの致死温度まで高めて熱殺する。(この間約30分)

自分達の致死温度が、スズメバチに比べ数度(2〜3度)高いという温度差を利用したニホンミツバチの捨て身の戦法だ。(注)

これだけでも驚嘆に値するが、そこにはさらなる巧妙さがあったことが最新の研究で突き止められたのだそうだ。
  • スズメバチを熱死させるには48度まで温度を上げる必要がある。
  • ところが、CO2濃度を3%に上げると45~6度でもスズメバチは死ぬ。
  • 熱死作戦を展開している時、ニホンミツバチは、熱だけでなく球体内のCO2濃度を3%に高かめる行動も併せて取っていた。
    (京都学園大学坂本文夫教授他、論文発表/2009年 英科学誌 Nature、vol.460)
「熱」と「CO2」を組合わせたハイブリッド戦法。闘いをより短時間で決着がつけられるだけでなく、致死温度の差を大きくして自分達が自滅するリスクを軽減しようとしているのかも知れない。ミツバチは、人間の知らない知恵をまだまだ隠し持っていそうだ。

蛇足:
熱殺はニホンミツバチだけの行動。 日本にしかいないオオスズメバチと対峙するため、進化の過程でニホンミツバチが身につけた行動。日本の自然界でセイヨウミツバチが長期間の自生はできないのは、オオスズメバチに対するこの防御技術を持たないため、と言われている。