数日前から、深夜、林の中から時折聞こえるトラツグミの鳴声。
昭和50年代、“幽霊が出る” という噂が山梨県下のある地区で広まったことがあったそうだ。部落中がその話題で持ちきりになり、子供達は夜トイレに行くのを怖がったらしい。(「山梨の鳥」P48 山梨日々新聞社刊)
幽霊の正体はトラツグミだった。人の口笛に似て、物悲しげな音色。夏祭りのお化け屋敷で、幽霊が登場する時の効果音に似ていなくもない。
暗闇の森から聞こえてくれば、正体を知らない人にとっては確かに薄気味悪いだろう。
その特異な鳴声のせいで、トラツグミはいつも冤罪を背負わされてきた。鵺(ヌエ)、地獄鳥、怪鳥などとも呼ばれ、江戸時代の絵師 初代 国安の「源頼政対鵺図」でもまさに怪物そのものが描かれている。(写真)
“退治してみたら怪物の正体はトラツグミだった” というのがこの物語のオチだ。
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今夜は、しきりに “トッキョキョカキョク” の鳴声が聞こえてくる。
暗闇の夜空を飛び交いながら鳴いているホトトギスの夜鳴きだが、この声を怖がる人はいない。