2011/10/15

ヤマナシかアオナシか?

アオナシの果実酒を仕込んでいて、以前抱いた疑問が再び頭をもたげてきた。
「県営八ヶ岳牧場天女山分場や、野辺山高原の梨の大木はヤマナシか?  アオナシか?」


観光パンフレットなどではヤマナシと書かれている。一方、「あれはヤマナシではなくアオナシだ」と言う声も結構ある。

前回の調査では . . . 「日本のナシ属の分類は不完全のままとなっているのが現状」  (The Jounal of Japanese Botany, 2003Juney) . . . らしいので、結論は「正解なし」しかないのかな、というのが自分なりに出した解答だった。
近年盛んになったゲノム解析などでその後事態が変っているのではと調べてみると、案の定、多くの新しい研究成果が発表されている。

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八ヶ岳周辺で“ナシ”と呼ばれる木は、コナシ、アズキナシ、ヤマナシ、アオナシの4種類がある。


これらの中で、バラ科ナナカマド属のアズキナシ(別名ハカリノメ 写真左)と、バラ科リンゴ属のコナシ(別名ズミ 写真右)は、自分のような素人でも識別できる。問題はバラ科ナシ属のアオナシとヤマナシ。

以前に読んだ文献、今回新たに目にとまったネット上の研究論文やレポートから、これまでの私的見解を以下のように微修正することにした。
  • 自生種と呼べる梨は次の三種類。
    ① イワテヤマナシ(別名ミチノクナシ)
    ② アオナシ
    ③ マメナシ(別名イヌナシ)

  • イワテヤマナシは東北地方だけに自生する種。宮沢賢治がヤマナシと呼ぶ梨がこれにあたる。

  • マメナシは、伊勢湾周辺だけに生育する自生種。環境省によりレッドリストの絶滅危惧IB類の指定を受けている。

  • “ヤマナシ(or ニホンナシ)”と呼ばれる"野生種"の梨は日本各地にあるが、栽培種が野生化したもので日本の固有種ではない(異説もある。)
. . . で、八ヶ岳牧場や野辺山のナシの木は「アオナシ」という結論だ。(注)

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とは言え、“ヤマナシ”の呼び名は、“山(=自然)に生えている梨の木”という意味でも使かわれているようなので、牧場や野辺山の梨の木を"ヤマナシ"と呼んではいけない、ということないだろう。山梨県に縁のある者としては、“ヤマナシ”の名称はなんとなく捨て難い。

今回参考にした主な資料:
 (神戸大学大学院農学研究科付属食資源教育研究センター 片山研究室)
 (筑波大学大学院 生命環境科学研究科 先端農業技術科学専攻)
山梨県・長野県におけるアオナシの探索・収集
  (農業・生物系特定産業技術研究機構・果樹研究所・遺伝育種部・遺伝資源研究室)

注記:八ヶ岳牧場天女山分場に生えている木の一部はエゾノコリンゴ、という声もあるが、自分の眼には果実の形が異なるような気がするのだが(?)