今回わが家のミツバチ本棚に加わった2冊、「スガレ追ひ」と「養蜂記」のどちらもネットショップでの購入。
「スガレ追ひ」は釣りキチだった井伏鱒二がクロスズメバチ狩りについて書いたもの。
微に入り細に入り記述された内容は実に具体的で説得力に富み、彼の指示通りにやればクロスズメバチの巣を容易に見つけることができ、おいしい蜂の子がたんまりと収穫できそうに思えてくる。
だが注意深く読んでいくと、内容の全てが井伏鱒二の耳学問で;
. . . 私は唐松の枝に蛙の肉の仕掛をして、夕焼が凋せるまで待ってゐたがヂバチは一匹も來なかった。運が惡かった。というのが本人の唯一の実体験らしいということが分かってしまうと、なんとなく作品の説得力も萎えてしまう。
「養蜂記」は、アララギ派歌人、共産党党員、農民作家、と多面な顔を持ち、小説、エッセイ、評論、翻訳、青少年向け著書など、多分野で活躍した杉浦明平著。
心弾ませて描く蜜蜂家族の四季 . . . 驚異の蜜蜂世界を生き生きと描き、自然と人間が織りなすドラマを刻む最新エッセイ。という帯広告コピーからも、凡人の自分には思いもつかないような視点からの養蜂生活が描かれているに違いない、と期待を持って読み始めたが、蜜蜂に刺される怖さの話ばかりがやけに目立って少々ガッカリさせられた。
もし今回の2冊に神田のリアル古本屋で出会っていたなら、店頭で斜め読みするか図書館で借りて済ませることにし、自分で購入することは多分なかったろう。(この2冊が駄作だと決めつけているわけではい。あくまでもこちらの期待が"的外れ"だったということだ。)
ということで今回の買物の収穫は、ときには神田神保町に出向くことも必要なんだ、という理由が見つかったということになりそうだ。ましてや、「海の男の艦隊料理」の時のように、思わぬ掘り出し物に出喰わすというような楽しさはバーチャル古書街には期待できないはずだ。