2015/02/27

日比谷公園のニホンミツバチ

数日前の夕方、NHKの「首都圏ニュース」(だったと思う?)の番組で、女性アナウンサーが日比谷公園からの中継している映像があった。その時彼女の背後の菜の花の上を飛び交っていた昆虫がミツバチのように見えので、それを確認したくて今日は日比谷公園まで出かけた。

公園内の草地広場と庭球場を隔てる歩道に沿って植えられたそんなに広くはない菜の花畠だったが、かなりの数のミツバチが花粉を集めて飛び回っている。そしてその中にニホンミツバチが混ざっていることが確認できた。

昭和記念公園や多摩川の河原などの郊外でさえ、最近はセイヨウミツバチばかりでニホンミツバチの姿はすっかり見かけなくなった。なのにこんな都心の公園でセイヨウミツバチに伍して頑張っているニホンバチがいるとは感動ものだ。皇居の二の丸雑木林まではここから1キロ足らずの距離。もしかしたらそこの自然巣に住むローヤル・ビーかもしれない。

もっとも銀座ミツバチプロジェクトの巣箱もここから1.2キロほどの場所。銀座プロジェクトでも日本ミツバチを飼育していると以前聞いたことがあるので、ここのミツバチ達は銀座三丁目から出向いてきている可能性もおおいにありそうだ。
ともあれこれだけ群れているということは、ミツバチにとって都心が住み心地の良い環境になってきたことの証左だろう。パリのミツバチ同様、日本でも都会派ミツバチが里山ミツバチを凌駕するような時代になってきているのかもしれない。

2015/02/21

神代植物園のアオバト


「カメラマンがたくさん集まっている。アオバトがいるらしいよ。」神代植物公園での植物観察会に参加している人からの電話連絡を受け早速駆けつけてみた。この冬は4羽のアオバトが園内に住み着いているのだそうだ。

公園に着くとアオバトのいる場所はすぐに分かった。深大寺門の直ぐ近くのイヌシデとアラカシの高枝にそれぞれ2羽づつのアオバト、そしてそれらの木を多くのカメラマンが取り巻いていた。

しばらく様子を見ていると、樹上のアオバトに一生懸命レンズを向けているのはたまたま近くを通りかかった"一見さん"カメラマンのようで、バズーカを構えた”通”のカメラマン達はレンズをのぞく素振りも見せないで泰然と構えている。

そのバズーカカメラマンが突如動き出したのはアオバトが高枝から地上に舞い降りてきた時。一斉にシャカシャカ、シャカシャカと高速連写のシャッター音が響いた。

神代植物公園のアオバトはほとんどを樹上で過ごし数時間に一度だけ地上に降りて来て地面のドングを拾って食べるらしい。常連客はそのタイミングをジッと待っていたのだ。一日数回のそのシャッターチャンスに、現場に着いた直後に巡り合えた自分はかなりラッキー者だったようだ。(上写真は2時35分に撮影)

鳩と言えばこれまでドバトとキジバトしか知らなかったし、山荘のバードフィーダーを独り占めするキジバトにはあまり好感を持てなかった。公園のテーブルに座っていると、脚元まで迫ってきて餌をねだるドバトの無作法な態度や、二日酔いのような赤い目つきもあまり好きではない。

それに比べ今日見たアオバトは随分と印象が違った。アオ(=緑)、黄、クリームの三色の濃淡が混ざった羽毛の色合いは上品で、雄鳥の翼のワインレッドは光に映えて実に美しい。そして嘴は透明感のあるエメラルドグリーン。地味な色合いの多い日本在来種の鳥の中では際立って華やかで東南アジアにいそうな野鳥に見える。

アオバトはその生態があまり解明されていない謎めいた鳥で、海水や温泉水などを飲む珍しい習性を持つ野鳥なのだそうだ。と言っても海水を飲むアオバトの姿がどこの海岸でも見られるわけではないようで、確認されているのは大磯町の照ヶ崎海岸や北海道小樽市の張碓(はりうす)海岸などごく限られた地域だけらしい。
アオバト(緑鳩、学名:Treron sieboldii)のそんな背景を知ると、少々高めの500円の入園料を払ってでもあれだけのカメラマンが集まっていたことに初めて納得ができた。

2015/02/08

(続) 多摩川のミミズク


いまにもミゾレに変わりそうな冷たい雨。この寒さの中で昨日のトラフズクはどうしているのだろうと様子を見に行った。

昨日と全く同じ枝の、寸分違わぬポジションに止まっている。今日は羽角を寝かせていて一見ミミ(耳)ズクらしからぬ顔貌だ。ただ、昨日は一度も開かなかった眼をカッと見開いているので、トラフズク特有の鮮やかな虹彩のオレンジ色が遠くからでもよく分かる。
こうして拡大してみると、同じミミズクでも、以前インドネシアで手に入れた木彫りの壁飾りマレーワシミミズクとは随分顔形が違う。

そしてフィールドスコープでのぞいて見ると、昨日は気づかなかったがすぐ近くの草叢の中にもう2羽の仲間がいた。冬の間、トラフズクやコミミズクは群れで塒(ねぐら)を作ることはよく知られている。


フクロウの百科事典、 "The Owl Pages" によれば、. . .
  • 雄はテリトリーを定めると盛んに縄張り宣言の鳴声を発する。
  • 巣はカラスなど他の鳥の空巣や草叢を利用する。
  • 求愛期、雄は巣の近くで不規則な滑空飛翔や羽ばたき、時には独特の羽打音を出してディスプレイを繰り返す。
  •  . . . 
と記述されている。

The Owl Pagesには、雄、雌、雛ごとの鳴声、外敵が近づいた時の警戒音、求愛の羽打音など興味深い録音記録もある。警戒時の鳴声はフクロウとそっくりで、営巣期も3月中旬〜5月と八ヶ岳のフクロウ達とほぼ同時期のようだ。であれば、間もなく "結婚〜産卵〜育雛〜巣立ち" と、約3ヶ月にわたるエキサイティングなドラマが始まるはずだ。

トラフズクのそんな営巣生活をこんな街中で観察できれば素晴らしいことなのだがかなりむずかしい願望なのかも知れない。八ヶ岳の森のフクロウの天敵、テンやハクビシンはこの辺りにはいそうもないが、それに代るもっと手強い天敵が多そうだ。
トラフズク夫婦が子育てに専念できる静穏な生活環境をなんとか確保できないものかと考えを巡らしてはいるのだが . . . 。

2015/02/07

多摩川のミミズク

”淀川にコミミズクが来ているそうだよ” . . . フクロウ仲間のIG氏から届いたメール。大阪の淀川にいるなら東京の多摩川でも可能性があるはずと、午後の半日はコミミズを求めて多摩川河川敷を歩いてみた。


週末とあって河畔はかなりの人出。これではコミミズクも姿を見せにくいだろう。半ば諦めながらも葦原の茂みに分け入っていくと、草叢に生えている一本の木にフクロウスタイルで止まっている鳥影が!

カメラでズームアップしてみると、居眠りをしているのか一向に眼を開かない。というわけで鮮やかなオレンジの目は確認できなかったが、兎の耳のように長い羽角から、英語名でLong-eared owlと呼ばれるトラフズクに間違いなさそうだ。(写真上)

ネット情報によると淀川のコミミズクには連日300人近いカメラマンが押し寄せているらしい(右写真)。幸い多摩川のトラフズクはまだ世間に知れ渡っていないようで、週末にもかかわらず周りには人っ子一人見当たらない。おかげで藪内正幸氏のフクロウ・マグボトルの熱いお茶を飲みながら、「一羽対一人」の静かな対面を思う存分に楽しむことができた。

2015/02/04

「ノクターン - 夜想曲」(倉本聰)


富良野GROUPの東京公演初日。新国立劇場小ホール。
東日本大震災から数年後、原発事故の避難区域指示が解除された海辺で砂浜を掘り返す中年の男。ピアノ教室の発表会を翌日に控えながら津波にさらわれた二人の娘の遺体を探し続ける元原発工員の父親だった。
クライマックスは二人の姉妹の『夜想曲(ノクターン)第20番』の連弾。会場からはすすり泣きの声も聞こえた。"遺作"のサイドネームも持つこの曲を倉本聰はよほどお気に入りのようで「風のガーデン」でも平原綾香に歌わせていた。

忘れ去られていくことの悲しみ。忘れ去ろうとする人の苦しみ。そして、事故そのものも忘れたかのように原発再開へと突き進んで行こうとしている日本人。控え目に自己主張するのが常の倉本作品とは異なり、作者の激しい思いがはっきりと感じられる舞台だった。
観客席には小泉純一郎元総理の姿も。