東日本大震災から数年後、原発事故の避難区域指示が解除された海辺で砂浜を掘り返す中年の男。ピアノ教室の発表会を翌日に控えながら津波にさらわれた二人の娘の遺体を探し続ける元原発工員の父親だった。クライマックスは二人の姉妹の『夜想曲(ノクターン)第20番』の連弾。会場からはすすり泣きの声も聞こえた。"遺作"のサイドネームも持つこの曲を倉本聰はよほどお気に入りのようで「風のガーデン」でも平原綾香に歌わせていた。
忘れ去られていくことの悲しみ。忘れ去ろうとする人の苦しみ。そして、事故そのものも忘れたかのように原発再開へと突き進んで行こうとしている日本人。控え目に自己主張するのが常の倉本作品とは異なり、作者の激しい思いがはっきりと感じられる舞台だった。
観客席には小泉純一郎元総理の姿も。