2015/02/21

神代植物園のアオバト


「カメラマンがたくさん集まっている。アオバトがいるらしいよ。」神代植物公園での植物観察会に参加している人からの電話連絡を受け早速駆けつけてみた。この冬は4羽のアオバトが園内に住み着いているのだそうだ。

公園に着くとアオバトのいる場所はすぐに分かった。深大寺門の直ぐ近くのイヌシデとアラカシの高枝にそれぞれ2羽づつのアオバト、そしてそれらの木を多くのカメラマンが取り巻いていた。

しばらく様子を見ていると、樹上のアオバトに一生懸命レンズを向けているのはたまたま近くを通りかかった"一見さん"カメラマンのようで、バズーカを構えた”通”のカメラマン達はレンズをのぞく素振りも見せないで泰然と構えている。

そのバズーカカメラマンが突如動き出したのはアオバトが高枝から地上に舞い降りてきた時。一斉にシャカシャカ、シャカシャカと高速連写のシャッター音が響いた。

神代植物公園のアオバトはほとんどを樹上で過ごし数時間に一度だけ地上に降りて来て地面のドングを拾って食べるらしい。常連客はそのタイミングをジッと待っていたのだ。一日数回のそのシャッターチャンスに、現場に着いた直後に巡り合えた自分はかなりラッキー者だったようだ。(上写真は2時35分に撮影)

鳩と言えばこれまでドバトとキジバトしか知らなかったし、山荘のバードフィーダーを独り占めするキジバトにはあまり好感を持てなかった。公園のテーブルに座っていると、脚元まで迫ってきて餌をねだるドバトの無作法な態度や、二日酔いのような赤い目つきもあまり好きではない。

それに比べ今日見たアオバトは随分と印象が違った。アオ(=緑)、黄、クリームの三色の濃淡が混ざった羽毛の色合いは上品で、雄鳥の翼のワインレッドは光に映えて実に美しい。そして嘴は透明感のあるエメラルドグリーン。地味な色合いの多い日本在来種の鳥の中では際立って華やかで東南アジアにいそうな野鳥に見える。

アオバトはその生態があまり解明されていない謎めいた鳥で、海水や温泉水などを飲む珍しい習性を持つ野鳥なのだそうだ。と言っても海水を飲むアオバトの姿がどこの海岸でも見られるわけではないようで、確認されているのは大磯町の照ヶ崎海岸や北海道小樽市の張碓(はりうす)海岸などごく限られた地域だけらしい。
アオバト(緑鳩、学名:Treron sieboldii)のそんな背景を知ると、少々高めの500円の入園料を払ってでもあれだけのカメラマンが集まっていたことに初めて納得ができた。