2014/07/28

リンネソウ(Linnaea borealis)

東京野川公園のボランティアグループの植物観察会に便乗。フィールドは長野県湯の丸高原。
参加者のお目当の一つはリンネソウだったようで、花の前には撮影の順番待ちの列ができるほど。門外漢の自分と違って、野草愛好家の皆さんには植物学の大御所リンネの名前が付いた花というだけでも特別の思いを感じるのだろう。(注1)


ずいぶん以前の話になるが、スウェーデンのウプサラ大学との共催で小さな学会を企画した折にリンネガーデンを訪問したことがある。その時は、“有名なリンネにしてはずいぶんとこじんまりした植物園だな”という程度の感想しか持たなかったが、今日の参加者の雰囲気からするともっともっと感動すべき体験だったようだ。

「分類学の父」と称される
カール・フォン・リンネ(Carl von Linné)。彼はことのほかこの花を好み、学名に自分の名前をつけただけでなく、個人のエンブレムとしても使用していたらしい。リンネソウを手にした肖像画も何点かある。(注2)


日本では亜高山〜高山植物になるリンネソウを目にすることは稀だが、北欧ではかなり身近な野草らしい。フィンランドの作曲家シベリウスの作品の曲名や(注3)、デンマーク、ロイヤル・コペンハーゲンの最高級陶器フロラ・ダニカシリーズのモチーフになり、北欧各国の切手デザインには何度も登場している。


「なんでそれほどリンネはこの花が好きだった?」というのがリンネソウにカメラを向けながらの正直な感想だったが、帰宅してからWEB上に無数にある写真をながめていると、なんとなくその理由が分かるような気がしてきた。日本人にとっての早春の里山のスミレ、あるいは高山のコマクサの群落のような雰囲気がありそうだ。一度本場のリンネソウの群落を見てみたいし、できればその時にはリンネガーデンを改めて見学したい気がしてきた。

注記:
(1) 円内埋め込み写真はリンネソウを下からのぞきこんで写したもの。
(2) 肖像画は、植物研究のために長期間滞在したスカンジナビア半島北部ラップランド地方の原住民サミ族の民族衣装で着飾った若き日のリンネ。Hendrik Hollander作(1853年)。
(3) ピアノ曲「13の小品」作品76の第11曲 "Linnaea"