2014/01/15

七草囃子(ななくさ ばやし)


七草囃子の歌詞の意味を知りたいと気軽な気持ちで調べ始めたが、予想した以上に諸説紛々で簡単に疑問解消とはいきそうにない。

以下は作業途中の備忘録;
  • 七草粥が日本で最初に記録に現れるのは平安初期、神宮の祭事を記録した書物「皇大神宮儀式帳」(804年)だそうだ。それが民間行事として広まり、ほぼ現在のような形になったのは室町時代のことらしい。(日本食生活史)

  • 大正末期~昭和初期の各地の食生活を聞き書きした「日本の食生活全集 」には、各地域の七草囃子が集められている。歌詞は地方により様々だが、 “トードノトリ”というフレーズだけは共通している。
  • トードノトリ(=唐土の鳥)は中国伝承に登場する鬼車鳥(きしゃちょう)。九つの首を持つ怪鳥で、首の一つは犬に喰いちぎられていつも血を滴り落としている。その血が降りかかると凶事にみまわれる。
  • 鬼車鳥は、夜中に庭に下りて捨てられた人間の爪をついばむ。時には家の中に入り込んで人間の魂を奪う。(荊楚歳時記)
  • そこで、大声で七草唄を囃し、まな板を叩いて大きな音をたてるのは鬼車鳥(=邪気、災厄)を追い払うため。(右図 1832年 山東庵京山作 歌川国芳画)
  • ネット上には、唐土の鳥を“農作物に害を及ぼす大陸からの渡り鳥”と解釈し、七草囃子と鳥追い唄を結びつける解説もあるが、神事としての七草粥と、農事の鳥追い行事は別物と考えた方が良さそうだ。
  • 七草囃子の誕生時期は定かではないが、江戸初期に貝原益軒により書かれた「日本歳時記」には、七草囃子のことが書かれているそうだ。(日本歳時記はまだ入手できていない。)
  • 宮中歳時記 によれば、宮中では1月7日に「七草粥」と「初爪切」の儀が執り行われるらしい。"爪→鬼車鳥→唐土の鳥→七草囃子"とつながっているようで興味深い。
家庭では廃れてしまった伝統風俗を次代の子供達に教えたい、との思いなのだろう。意外と多くの幼稚園や児童館などで七草囃子を唄いながら七草粥を作るイベントが行われているようだ。(上写真。南信州ナビから拝借したもの)

注記:
鬼車鳥を巨大なミミズクとする説もある。ミミズク(=フクロウ)は、国や時代により知恵の神と崇められたり、凶鳥として忌み嫌われたりする。詳しく調べてみたいテーマだが、今回は手をつけないことにした。