2013/10/19

都立農業高校公開講座


都立農業高校の公開講座の初日。教場は同校の神代農場。自宅から徒歩で25分、その大半が散策に快適な「深大寺通り」。午前中だけの講座が終わった後は深大寺蕎麦の昼食をとり、その後は深大寺神代植物公園周辺を散策できる、と通学コースとしては申し分ない。

国分寺崖線の谷頭に位置する神代農場は、敷地内に“ハケ”の湧水が流れる低地湿地帯と、それを取り囲むように連なる雑木林や竹林の傾斜地や台地。そんな変化に富んだ自然環境を利用して、水稲耕作、ワサビ栽培、ニジマス養殖、椎茸・タケノコ育成、. . . などの農業実習が行われている。
(下写真は京王線沿線を案内する街はぴから拝借した農場敷地内風景。)

神代農場はカタクリの群生地として近隣住民には良く知られている場所でカタクリシーズンの農場開放日には」多くの見学者が訪れる。

公開講座は、竹炭作製、竹籠製作、ニジマス燻製、...など作業中心のカリキュラムだが今日は3時間の座学。講義名称は「武蔵野の自然の成り立ちと生物多様性」。

“常緑広葉樹林帯の武蔵野になぜカタクリが生き残ったのか?”
その謎解きを、武蔵野の植生やそこに住む人々の生活を、近世→中世→古代→弥生→縄文→後期旧石器(=最終氷期)と逆上って解説していく小川先生の講義は、さながら実験刑事トトリ風の推論の展開が面白く、3時間の授業はあっという間に終わってしまった。

そして今日の講義ではカタクリに関する気になる話も。農場敷地内のカタクリの結実率(種子を作る株 v.s. 開花する株)が異常に低いのだそうだ。

その原因が「自家不和合性」の現象なのか?あるいは「ポリネーター減少」に起因するものなのか?これまでの実験や観察からは、ポリネーター要因への疑念が高まりつつあるとのことだ。

もしそうであるなら、神代農場のカタクリ問題は、八ヶ岳南麓のミツバチ自然巣分蜂群捕獲数急減問題に繋がってくる。さらには、近年注目を集めるようになってきた"自然界のポリネーター不足による環境・農業問題"と同根の現象と言えそうだ。

(カタクリの写真は、神代農場でなく、近くの神代植物公園で今年春に撮影したもの。このカタクリは自生ではなく、背後のニリンソウとともに人工的に移植されたものと思う。訪花しているのはセイヨウミツバチのようだ。)