ミードは人類が最初に知った醸造酒で、古代〜中世には「Nectar of the Gods(神々の甘露)」と呼ばれた高貴な飲料だったそうだ。
砂糖や葡萄ワインがより手軽な食材になるにつれミードの影はじょじょに薄れてしまったが、葡萄栽培に向かない北欧や東欧の寒い地に住むゲルマン人やスラブ系民族の間で、あるいは教会の儀式用などに、ミード自家醸造の文化は引き継がれてきたのだという。
ところがそのミードに突然リバイバルが起きた。「エリザベス」、「恋におちたシェイクスピア」、「ロード・オブ・リング」などの映画で、たて続けにミードを飲む場面が演じられたのがその引き金になった、と解説するむきもある。もちろん、オーガニックフードやスローフードなどへの関心の高まりがその下地としてあってのことだろう。
いまではエリザベス一世がミード愛飲家であったことも広く知られるようになり、ローズマリー、タイムなどのハーブで香りづけした“女王陛下のレシピ”は、そんなミード愛好家達の間で人気のレシピになっている。
ミードには媚薬や強壮剤としての効能があると信じられ、新郎新婦は結婚直後の一ヶ月間、自宅にこもってミードを飲んで子作りに励んだのがハネムーン(honey moon)という言葉の由来と言われいる。ロシアのサロン画家、Konstantin Makovskyの作品「Cup of honey drink (mead)」にはそんな初々しい新婦の姿が描かれている。
(写真はWikipediaから借用)